マナーOJTインストラクターの國吉浩太朗です。
この言葉遣い@ビジネスは、実際に届いたメールや、見たことのある使い間違いをもとに執筆しています。
今回のキーワードは「いたす」です。
ビジネスメールですと「よろしくお願いいたします。」や「大変失礼致しました。」等、普段から目にする機会は多いのではないでしょうか。
ですが、この「いたす」も、使い分けを間違えていることが多い言葉の1つでもあるのです。
せっかく丁寧な言葉を使おうとしているのに、使い方を間違ってしまっては意味がありませんよね。
今後、間違った使い方をしないように、しっかり学んでいきましょう。
ひらがなの「いたす」と漢字の「致す」の違い
まず、「致す・いたす」の意味から見ていきましょう。
いた・す【致す】 の解説
[動サ五(四)]《「いたる」に対して「いたらせる」の意。1 届くようにする。至らせる。
2 そのことがもとで、ある結果、特によくない結果を引き起こす。ある状態に立ち至らせる。
3 全力で事を行う。心を尽くす。
4「する」の謙譲語
5 命を差し出す。身をささげる。
6 (補助動詞)動詞の連用形やこれに「お」を付けた形、または、漢語サ変動詞の語幹やこれに「御 (ご) 」を付けた形などに付く。出典:デジタル大辞泉(小学館)
ひらがなの「いたす」は補助動詞
ひらがなで書いた場合は、6の「補助動詞」です。「(お)または(ご)+動詞+いたす」という文法になります。
「いたす」+「ます」で、「いたします」となり、より丁寧で相手への敬意を高めた表現になります。
漢字の「致す」は動詞
漢字で書いた場合は、「動詞」です。
ビジネスでは、4の「する」の謙譲語(相手への敬意を表すために自分の行動をへりくだる表現)として、使用することが多いのではないでしょうか。
ひらがなの「いたす」と同様、「致す」+「ます」で、「致します」という表現は、メールや会話でよく見聞きすると思います。
「いたす」と「致す」の使い分け
例文で使い分けを見てきましょう。
補助動詞「いたす」の使用例
※「(お)または(ご)+動詞+いたします(いたす+ます)」という文法を使用します。
動詞「致す」の使用例
「する」の謙譲語として使用する場合
「する」がそのまま「致す」に代わります。
謙譲語:現場での指示は、私が致します。
謙譲語:私と致しましては、第2案を先方にご提示したいと考えております。
その他の例
「いたす」と「致す」の混同を防ぐ方法
「いたす」と「致す」の混同を防ぐ方法は、伝える言葉の意味を理解しておくことです。
例えば、「失礼致しました。」は、「礼儀に反することをしてしまいました。」という意味ですので、「する」の謙譲語表現です。つまり、漢字表記が正しいということになります。
「お送りいたします」は、「お+送る+いたします」と「送る」を丁寧にした表現ですので、ひらがな表記が正しいということになります。
また、多用を防ぐ、つまり「言い換える」ことにより、余計な混同をしなくて済みますので、言い換えも取り入れるようにしましょう。
補助動詞「いたす」の言い換え
補助動詞「いたす」の言い換えを、下記文章で見ていきましょう。
お願いいたします。
この文章では「いたします」が2回使用されています。このような場合、どちらか一方を残すようにすると、すっきりした文章になります。
●言い換え例
お願いいたします。
動詞「致す」の言い換え
動詞「致す(する)」の言い換えを、下記の文章で見ていきましょう。
まとめ
「いたす」には、補助動詞の「いたす」と動詞の「致す」があります。
この2つの違いに留意し、正しく使うようにしましょう。