マナーOJTインストラクターの國吉浩太朗です。
この言葉遣い@ビジネスは、実際に届いたメールや、見たことのある使い間違いをもとに執筆しています。
今回のキーワードは「いただく」です。
「いただく」は、よく使う敬語表現ですので、ビジネスの場以外でもよく耳にしたり、目にしたりするのではないでしょうか。
お店ですと「ご来店いただきまして・・・」やビジネスメールですと「資料をお送りいただきまして・・・」等、常用的に使われていると思います。
ですが、この「いただく」は、使い方を間違えてしまうことが多い言葉の1つでもあるのです。せっかく丁寧な言葉を使おうとしているのに、使い方を間違ってしまっては意味がありませんよね。
今後、間違った使い方をしないように、しっかり学んでいきましょう。
ひらがなの「いただく」と漢字の「頂く」の違い
ひらがなの「いただく」は補助動詞
ひらがなで書いた場合は、「補助動詞」です。
相手に何かをしてもらったことや、何かしてほしいことを丁寧に言う表現です。
漢字の「頂く」は動詞
漢字で書いた場合は、「動詞」です。
最もよく使用するのは、「もらう」、「食べる」、「飲む」の謙譲表現(相手への敬意を表すために自分の行動をへりくだる表現)です。
このように、「いただく」という言葉は、ひらがなで「いただく」と書いた場合と漢字で「頂く」と書いた場合とでは意味が異なるため、表現を間違えやすくなるのです。
「いただく」と「頂く」の使い分け
例文で使い分けを見てきましょう。
補助動詞「いただく」は動詞との組み合わせ
なお、「名詞+する」で動詞になるため、名詞部分だけに「いただく」をつけた場合も補助動詞の扱いになります。 例:連絡する→連絡いただく
お願いしたいときに、いただ「き」ますとすると、強制力がでてきてしますので、使わないようにしましょう。
例)お試しになられた商品は、ご購入いただきます。
この言いまわしでは、「試用した商品は購入しろ」と同じ意味になりますので、購入をお願いする場合には使わないようにしましょう。
可能「~することができる」を表す時にも、いただ「け」ますを使用します。
例)お試しになられた商品は、ご購入いただけます。
動詞「頂く」は謙譲表現
「いただく」の所でも書きましたが、動詞として使用する場合は、「もらう」、「食べる」、「飲む」の謙譲表現になります。
もらう(謙譲語)
食べる(謙譲語)
飲む(謙譲語)
「頂く」の尊敬表現
もらう
食べる・飲む
言い換えて混同を防ぐ
「いただく」と「頂く」の使い間違いの一番簡単な防ぎ方は、多用を防ぐことです。多用を防ぐ、つまり「言い換える」ことにより、余計な混乱をしなくて済みます。
特に、敬語が苦手な方は、難しい表現を使用しないというのも一つの方法です。
補助動詞「いただく」の言い換え
補助動詞「いただく」の言い換えを、書類の送付をお願いする文章で、見ていきましょう。
この文章は送ってもらえますか?=可能を丁寧にした表現です。
この表現の場合、相手に拒否権が出てきます。必ず書類の送付が必要な場合には、避けた方が良いでしょう。必ず送付が必要なことを伝えたい場合は、下記言い換え例の表現を使用しましょう。
●言い換え例
上記の例は全て、「送ってください」という文章を丁寧にしたものです。そのため、強制力を持った表現になります。この表現の場合、相手に拒否権はありませんので、必ず送付が必要な場合は、上記のような表現でも問題ありません。
ですが、少々丁寧さに欠ける感じがしますので目上の方には使用しない方が良いでしょう。
必ず送付をして欲しいことを伝えつつ、でも拒否はして欲しくない時は下記の表現をおすすめします。
書類をお送りくださいますようお願いいたします。
『お送りいただけますようお願いいたします』は間違いです。よくメール等で見かけますが、これは誤った表現ですので使わないようにしましょう。
動詞「頂く」の言い換え
まとめ
「いただく」には、補助動詞の「いただく」と動詞の「頂く」があります。
この2つの違いに留意し、正しく使うようにしましょう。