言葉遣い@ビジネス 6 「いたす」の使い方

wordchoice 言葉遣い

マナーOJTインストラクターの國吉浩太朗です。

この言葉遣い@ビジネスは、実際に届いたメールや、見たことのある使い間違いをもとに執筆しています。

今回のキーワードは「いたす」です。

ビジネスメールですと「よろしくお願いいたします。」や「大変失礼致しました。」等、普段から目にする機会は多いのではないでしょうか。

ですが、この「いたす」も、使い分けを間違えていることが多い言葉の1つでもあるのです。
せっかく丁寧な言葉を使おうとしているのに、使い方を間違ってしまっては意味がありませんよね。

今後、間違った使い方をしないように、しっかり学んでいきましょう。

ひらがなの「いたす」と漢字の「致す」の違い

まず、「致す・いたす」の意味から見ていきましょう。

いた・す【致す】 の解説
[動サ五(四)]《「いたる」に対して「いたらせる」の意。

届くようにする。至らせる。
そのことがもとで、ある結果、特によくない結果を引き起こす。ある状態に立ち至らせる。
 全力で事を行う。心を尽くす。
「する」の謙譲語
 命を差し出す。身をささげる。
 (補助動詞)動詞の連用形やこれに「お」を付けた形、または、漢語サ変動詞の語幹やこれに「御 (ご) 」を付けた形などに付く。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

ひらがなの「いたす」は補助動詞

ひらがなで書いた場合は、6の「補助動詞」です。「(お)または(ご)動詞+いたす」という文法になります。
いたす」+「ます」で、「いたします」となり、より丁寧で相手への敬意を高めた表現になります。

漢字の「致す」は動詞

漢字で書いた場合は、「動詞」です。
ビジネスでは、4の「する」の謙譲語(相手への敬意を表すために自分の行動をへりくだる表現)として、使用することが多いのではないでしょうか。
ひらがなの「いたす」と同様、「致す」+「ます」で、「致します」という表現は、メールや会話でよく見聞きすると思います。

「致す・いたす」は謙譲表現(相手への敬意を表すために自分の行動をへりくだらせた表現)ですので、目上の方の行動には使用できません。

「いたす」と「致す」の使い分け

例文で使い分けを見てきましょう。

補助動詞「いたす」の使用例

※「(お)または(ご)動詞+いたします(いたす+ます)」という文法を使用します。

資料をお送りいたしますので、ご確認くださいませ。
お手数をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申しあげます。

動詞「致す」の使用例

「する」の謙譲語として使用する場合

「する」がそのまま「致す」に代わります。

丁寧語:現場での指示は、私がします
謙譲語:現場での指示は、私が致します
丁寧語:私としては、第2案を先方に提案したいと考えています。
謙譲語:私と致しましては、第2案を先方にご提示したいと考えております。

その他の例

「届くようにする。至らせる。」という意味で使用する場合
遠い故郷に思いを致す。
「そのことがもとで、ある結果、特によくない結果を引き起こす」という意味で使用する場合
私の不徳の致すところです。誠に申し訳ございませんでした。
「 全力で事を行う。心を尽くす。」という意味で使用する場合
このプロジェクトを成功させるために、力を致す。

「いたす」と「致す」の混同を防ぐ方法

「いたす」と「致す」の混同を防ぐ方法は、伝える言葉の意味を理解しておくことです。

例えば、「失礼致しました。」は、「礼儀に反することをしてしまいました。」という意味ですので、「する」の謙譲語表現です。つまり、漢字表記が正しいということになります。

「お送りいたします」は、「お+送る+いたします」と「送る」を丁寧にした表現ですので、ひらがな表記が正しいということになります。

また、多用を防ぐ、つまり「言い換える」ことにより、余計な混同をしなくて済みますので、言い換えも取り入れるようにしましょう。

補助動詞「いたす」の言い換え

補助動詞「いたす」の言い換えを、下記文章で見ていきましょう。

商品が出来上がりましたらご連絡いたしますので、もうしばらくお時間くださいますよう
お願いいたします

この文章では「いたします」が2回使用されています。このような場合、どちらか一方を残すようにすると、すっきりした文章になります。

●言い換え例

商品が出来上がりましたら、ご連絡差しあげますので、もうしばらくお時間くださいますよう
お願いいたします
商品ができあがりましたら、ご連絡いたしますので、もうしばらくお時間くださいますようお願い申しあげます
商品が出来上がりましたら、ご連絡いたしますので、もうしばらくお時間くださいませ。

動詞「致す」の言い換え

動詞「致す(する)」の言い換えを、下記の文章で見ていきましょう。

面接会場へのご案内は、私が致します。
●言い換え例
面接会場へは、私がご案内します。
私が面接会場へご案内します。
敬語表現としては、「致します」がより敬意を表す言葉ではあるのですが、時と場合によっては、固い印象を与えてしまう可能性があります。そのような場合は、言い換え例のように「致す」を使用しない表現にするのも、気遣いのひとつです。

まとめ

「いたす」には、補助動詞の「いたす」と動詞の「致す」があります。
この2つの違いに留意し、正しく使うようにしましょう。

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