防災備蓄について

人事総務の道標

東日本大震災以降、東京都では東京都帰宅困難者対策条例が策定されるなど、防災対策の整備が強化されてきています。

弊社のある大阪市浪速区でも、大規模災害が発生すると18,276 人の帰宅困難者が出ると想定されており(大阪市危機管理室 2021年10月29日「大規模災害時における帰宅困難者対策」)」、企業は一斉帰宅の抑制や災害発生時の行動パターンのルール化、備蓄、安否確認・情報収集手段の確保など、「従業員の安全確保」と「企業活動の継続」のための企業防災を求められるようになりました。

今回は、「防災備蓄」として弊社が過去にコンサルティングで行った、防災備品選定についてご説明していきたいと思います。

一人当たりに一日に必要な備蓄量はどれくらいなのか

まず、従業員一人当たりに必要な物資の備蓄量を計算します。

通常、3日分の水や食料などの物資の備蓄が求められています。
この3日分の理由ですが、救助活動の現場では災害後3日(72時間)が勝負といわれているため、災害発生から3日間は応急対策活動として、救助・救急活動を優先されます。
つまり、水や食料の配給等より人命救助が優先される期間が3日間だということです。
この3日間を生き抜くために必要な量を備蓄しておくことが重要になります。

備蓄品として求められているものは下記のとおりです。

  1. 食料
  2. 毛布またはブランケット
  3. トイレ
  4. 休憩場所
  5. 情報等

これに加えて、

  1. 医薬品
  2. 救急用品
  3. 衛生用品
  4. その他軍手等

なども必要になります。

スペースや費用の関係ですべてを準備することが難しい場合もあると思います。
その場合は、用意できるところから順番に揃えていきましょう
例えば食料・水・トイレは会社で買い、その他の備品は従業員自身が必要に応じて用意する等決めておくのも良い方法です。

それでは、各項目について詳しく見ていきましょう。

食料 一人当たり1日1800キロカロリー以上

「大規模災害時の栄養・食生活支援に係る栄養施策について」によれば、地震後に必要なカロリーは1歳以上 1人1日あたり1,800~2200キロカロリーとのことですので、1日3食だと1食おおよそ600キロカロリー程度は確保しておく必要があります。
なお、年齢や性別、運動量によって必要となる摂取カロリーは異なりますので、自分に必要なカロリーを知っておくと良いでしょう。

水 一人あたり1日3リットル

水は飲料水として一日3リットル、加えて手を洗う用生活用水を確保しておく必要があります。
水は長期保存水でも構いませんが、通常の水をローリングストックしながら置いておくのも良い方法です。

毛布 一人1枚

事務所の環境によっては、カイロや断熱シートなどの寒さ対策も必要な場合もあります。
毛布を置く場所がない場合は、アルミブランケットなどを用意しておくと良いでしょう。

トイレ  計15回分の処理物資

建物の便器が使用できればいいのですが、使用できない場合も想定して、組み立て式の簡易トイレも準備しておく必要があります。
個数については、避難所におけるトイレの確保・管理ガイドラインによれば20人に1基必要とのことですが、男女別に最低1基ずつ準備しておくと良いでしょう。

休憩場所

会議室やミーティングスペース等を利用し、体調が悪い人が横になるスペース等も確保できるようにしておきましょう。

情報等

手回し式のラジオを準備するなど、電気が不通でも情報収集ができるようにしておきましょう。携帯電話の充電用のバッテリーなどもいくつか準備しておくと良いでしょう。

医薬品

解熱鎮痛剤、胃腸薬は準備しておきましょう。その他風邪薬や湿布薬等も置いておくと良いでしょう。また常備薬が必要な従業員には、常備するようにお願いしておく必要があります。

救急用品

災害時にはけがをしてしまうことが多くあります。そのため、消毒液、ばんそうこう、包帯、ガーゼなどの救急用品は、災害時にすぐ購入できるとは限らないので、一式そろえておきましょう。
サージカルテープ等、包帯をとめるテープもあわせて用意しておきましょう。

衛生用品

爪切り、マスク、綿棒、三角巾、ウェットティッシュなども必要です。
そのほか、コンタクトレンズの洗浄液や生理用品も置いておくと安心です。

その他

軍手、ヘルメット、ホイッスル、ロープ、食品用ラップ等

などについても必要となります。特に新型コロナウイルスのような感染症対策のために、マスク、ウェットティッシュ消毒液については、多めに準備する必要があります。

ロープは服を乾かしたり、物を固定するときにも使えます。
あわせて、シャワーカーテンやレジャーシートなどを買っておくと、目隠し代わりに使用できます。

食品用ラップは、撥水性もありテープなしでくっつくため、包帯の代わりに使用することもできるので便利です。

これらの物資を食品については人数分、それ以外についてもいくつか準備しておく必要があります。

備蓄物資のポイント

賞味期限、消費期限、使用期限の管理を行う

備蓄には、使用する期限があるものも多いです。置き場所とともにいつ期限が切れるか、次回の発注はいつにするかなどの計画を立てておきましょう。

賞味期限…おいしく食べられる期間なので、多少は過ぎても食べられる。

消費期限、使用期限…過ぎたものは廃棄した方がよい

忘れがちなのが、医薬品やカイロ、電池などにも使用期限があることです。
特に医薬品は使用期限が切れると効果がなくなる場合もありますので、注意しておきましょう。

なお、賞味期限がある備蓄食品については消費者庁も通知を出しています。

賞味期限の切れた災害備蓄食品について
決められた方法に従って保存された賞味期限切れ災害備蓄食品が、過度な食品ロスにつながらないよう、以下の点にご留意ください。

「賞味期限」とはおいしく食べられる期限のことであり、食べられなくなる期限ではありません。期限を過ぎたら食べない方がよい「消費期限」とは異なります。
食品の保存に当たっては、記載されている保存方法を守ることが大切です。一度開けた食品は、期限に関係なく早めに食べるようにしましょう。

また、飲料水は、賞味期限を超過しても一律に飲めなくなるものではありません。品質の変化が極めて少ないことから、一部のものについては期限表示(消費期限・賞味期限)の省略も可能としています。

[食品ロス削減]食べもののムダをなくそうプロジェクト

従業員のアレルギーを調べておく

せっかく準備した災害備蓄も、従業員がアレルギーで活用できない、というのでは意味がありません。食品だけでなく、金属アレルギーといったものにも注意しておく必要があります。すべてをアレルゲンフリーにしなければならない、とまでは言いませんが、災害物資を選ぶときには、従業員のアレルギー等も把握しておきましょう。

複数の種類を準備する

非常食だからと言って、同じ種類ばかり食べるのも飽きが来てしまいます。前述のアレルギー対策も兼ねて、複数の種類を準備することをお勧めします。

保管スペースをできるだけ少なくする

すべての物資を集めると、水だけでもかなりの量になります。加えて、水やお湯で戻すだけ、といった食品の場合、さらに追加で水が必要です。その点も計算に入れつつ食品を選定しましょう。オフィスコンビニの導入や置き薬などを導入しておけば災害時も活用できます。

間食としておやつも加える

間食として甘いお菓子やクッキーなどがあると、ストレスの緩和にもなります。余裕があれば入れておきたいものです。

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