今回は、人事または総務が担っていることが多い「福利厚生」について取り上げたいと思います。
これから就職、転職活動をする人は、応募会社の「福利厚生」について調べたり、気にして見ていたりする人も多いのではないでしょうか?
現状、雇用されている方も給与以外の「福利厚生」を見たり比べたりして、就職を決めた方も多いでしょう。
人事採用担当者としても、「福利厚生」について求人広告に書くことができるのと、できないのでは応募数も大きく変わってくるでしょうから、人材確保の上でも非常に重要な項目のひとつです。
今回は、人材確保にも、優秀な人材の流出防止対策としても有効な「福利厚生」と、「福利厚生制度を導入、見直すときのポイント」について、総務人事の目線でご説明していきたいと思います。
福利厚生とは
企業が、労働力の確保・定着、勤労意欲・能率の向上などの効果を期待して、従業員とその家族に対して提供する各種の施策・制度。主として従業員の生活の向上を支援する目的で実施されるもので、法律で義務づけられた法定福利(社会保険料の事業主負担など)と、企業が任意で実施する法定外福利(交通費・社宅・健康診断・育児支援・保養施設など)がある。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記のとおり、「福利厚生」には種類があります。
それは、「法律で義務づけられた法定福利」と「企業が任意で実施する法定外福利」の2つです。
もう少し詳しくご説明します。
法定福利厚生
「法定福利厚生」とは、国の定める保険に加入した事業主に雇用された人が受けられる制度のことで、法律によって事業主が費用を負担することが義務付けられているものをいいます。
いわゆる、社会保険※および子ども・子育て拠出金がこれに該当します。
法定外福利厚生
法定福利厚生以外の福利厚生で、事業主が任意で実施しているものをいいます。
任意で実施しているため必ず受けられるものではありませんが、通勤手当、住宅手当、定期健康診断受診費用等は多く実施されています。
その他、社宅や保養施設、ウォーターサーバーやコーヒーサーバーの設置、食事補助(社員食堂で食事を提供する)、確定拠出年金(企業型、個人型)なども法定外福利に含まれます。
防災備蓄についてはこちらにも記載しています。
福利厚生は誰のための制度?
定義にもありますが、「労働力の確保・定着、勤労意欲・能率の向上などの効果を期待して、従業員とその家族に対して提供する各種の施策・制度。」ですので、福利厚生は従業員のための制度です。
ですが、福利厚生制度は事業主が整備しなければならないため、導入するものを選ぶのは事業主です。
そのため、導入する制度を選ぶ基準が、職場に必要なもの、事業主が知っているもの、導入当時流行っていたものなど、事業主の知見に左右されることが多くあります。
また、導入時点ではよく利用されていたものでも、現時点では全く使われていなかったり、使用頻度が極端に下がっていたり、役に立たなかったりすることがあります。
このような場合は、早急に福利厚生制度を見直す必要があります。
なぜなら、福利厚生は会社の利益から捻出しなければならない費用であるため、役に立たない、使ってもらえない福利厚生制度に費用をかけるのは利益を圧迫するだけで無駄だからです。
また、使えない福利厚生制度は会社へのエンゲージメント低下にもつながります。
つまり、優秀な人がより良い環境を求めて退職してしまう可能性があるのです。
福利厚生制度導入、見直しのポイント
ポイントは大きく2つあります。
- 優先順位を意識する
- 福利厚生のアウトソーシングを検討する
順番に見ていきます。
優先順位を意識する
福利厚生の導入には順序があります。
福利厚生制度を新たに導入する際は、法律で定められている「法定福利厚生」の導入からはじめ、次に「法定外福利厚生」でも通勤に必要な費用等、支給しなければ人材確保が難しくなってしまうものから順に整えることになります。
また、既存の制度を見直す場合には、労働条件の不利益変更にならないもの、特に使用されていない、または著しく使用頻度が低いものなど形骸化しているもの(保養所はあるけど古いため誰も使わないなど)から見直していきましょう。
新規、追加で導入する場合は、エンゲージメントの向上につながる制度をいくつか比較し、可能であれば、社内アンケートを実施するなど従業員が使いたいと思うものを導入したり、従業員や従業員の家族のヘルスケアや災害時の安否確認など、従業員やその家族の生命身体に関わるものを優先したり、従業員自身のスキルアップにつながる制度を導入するなどの方法もあります。
特に、書籍購入の補助やセミナー受講料の補助などは業務に直結するため、比較的検討しやすい制度と言えます。
福利厚生はできるところから始め、徐々にスパイラルアップし、定期的に見直すことでより良い制度に変えていくことが重要です。
福利厚生サービスのアウトソーシングを検討する
従来は福利厚生を事業主が自ら整備することが多く、保養所の整備など事業主が定める範囲でしか利用できなかったのですが、福利厚生の一部をアウトソーシングし、従業員自身がサービスを選ぶことができる「福利厚生サービス」に加入している企業も増えてきています。
また、健康経営やコロナ禍による健康不安対策などから、従業員の運動不足解消のためのツールを導入したり、従業員の家族も含めて医師に直接相談できるヘルスケアシステムを導入したりするなど、いろいろな種類があります。
福利厚生サービスの種類によっては、趣味に利用できるサービスの体験や割引だけでなく、自己啓発セミナーなどの受講ができるなど、従業員の育成にもつながるものもあります。
アウトソーシングを検討する際は、サービスの種類だけでなく、従業員の家族含めたヘルスケアや育成の機会創出という観点を持って選ぶのも良い方法です。
まとめ
従来の福利厚生は、出社することが前提のものもあるため、テレワーク(リモートワーク)など働き方の多様性に伴い、整備されていた福利厚生の一部が受けられない、または必要がなくなってしまうものも出てきます。
せっかく費用をかけて福利厚生制度を導入するのであれば、事業主、会社とのエンゲージメントを上げる手段としてだけではなく、従業員に「使ってもらえる制度」を選びましょう。
それが、人材確保と人材流出防止の対策のひとつです。