今回は、普段耳にすることが多い「有効求人倍率」と「採用市場」について取り上げたいと思います。
これから就職、転職活動をする人や、採用担当者の人は「有効求人倍率」や「採用市場」について調べたり、気にしている人も多いのではないでしょうか?
「有効求人倍率」と「採用市場」は、就職、転職活動中の人は、自分の努めたい会社に入社しやすい状況なのか、人事採用担当の人は人材確保がスムーズにできるかどうかなどを図るための目安のひとつです。
今回はそんな、「有効求人倍率」と、「採用市場」について、総務人事の目線でご説明していきたいと思います。
NYA事務所の場合
おつかれさまです、三毛課長。
ちょっと教えていただきたいことがあるんですけど、
今いいですか?
真白くんおつかれさま。
うん。いいよ。何かな?
この前、採用市場について聞いたんですけど、
「売り手市場」って、どういう意味ですか?
「売り手市場」っていうのはね、
有効求人倍率が1を超えている状態を言うんだよ。
有効求人倍率…?
うん。求職者1人につき、
何件の求人があるかっていう指標のことだよ。
指標なんですね。
指標はどうやったら分かるんですか?
厚生労働省が発表してるよ。
全国のハローワークに出された有効求人数を
有効求職者数で割ったものだよ。
有効求人…
求職者…
割る…??
難しかったかな?
簡単に言うとね、
採用したい会社=有効求人数
仕事を探している人=有効求職者数
って考えるの。
はい。
例えば
・採用したい会社が10社
・仕事を探している人が10人いた場合
10社÷10人=1
になるよね。
…はい。
つまり
仕事を探している人=求職者1人に対して、
仕事=求人が1件ある状態。
だから、有効求人倍率は「1」になるんだよ。
…はい。
うん。
それで、売り手市場っていうのは、
有効求人倍率が「1」を超えている状態だから…
はい。
例えば
・採用したい会社が20社
・求職者が10人いた場合
20社÷10人=2
求職者1人に対して求人が2件ある状態になよね。
つまり、
有効求人倍率は「2」になるってことですか?
うん。その通りだよ。
有効求人倍率が「2」になるのは、
いいことなんですか?
そうだね。
求職者にとってはいいことだよ。
仕事を選べるってことだからね。
有効求人倍率が「1」だと選べない。
「2」だと、2件の内から選べるってことですよね?
うん。そうだよ。
うーん。
でも、苦手な仕事ってありますよね?
僕、大学のとき接客とかあんまり得意じゃなかったです。
選べないんじゃ…
ひとつの基準だから、得意・不得意は関係ないんだよ。
そうなんですか。
うん。
それで「売り手市場」って言うのは、
求職者より求人の数の方が多いから、
求職者が仕事を選びやすい状態を言うんだよ。
じゃぁ、求職者より求人の方が少ない場合は、
何て言うんですか?
買い手市場だよ。
有効求人倍率が「1未満」って言うことは、
求職者が数少ない仕事を取り合っている状態だからね。
なるほど。
でも、なんで「売り手」と「買い手」なんですか?
うーん。
例えば真白くんが今持っているペンを
私が100円で「買ったら」、何が手元に残るかな?
100円です。
ペンは三毛課長にお渡しします。
売買契約ですよね。
うん。
真白くんが「売り手」で、
私が「買い手」
ってことになるよね。
ということは…
求職者は労働力を提供するから「売る」
会社は賃金を払うから「買う」
っていうことですか?
そうだよ。
「売り手」、「買い手」どっちが選べるか
つまりどっちが強いかで市場が変わるんだよ。
なるほど。
仕事が選べる状態ってことは、「売り手」つまり求職者が強いから
「売り手市場」って言うんですね。
そうだよ。
有効求人倍率は厚生労働省のページで調べられるから、
真白くん、今から調べてみようか。
わかりました。
有効求人倍率と市場について
有効求人倍率とは
有効求人倍率とは、厚生労働省が発表している、全国のハローワークに出された有効求人数を有効求職者数で割ったものをいいます。
有効求人倍率は、都道府県別と全国平均があります。
「売り手市場」、「買い手市場」とは
有効求人倍率が、「1」を超えるかどうかで「売り手」=求職者、「買い手」=採用企業のどちらが優位であるかを示すものです。
- 売り手市場…求職者が優位。有効求人倍率が「1」を超える=求職者が仕事を選べる状態。
- 買い手市場…採用企業が優位。有効求人倍率が「1」未満=採用側が求職者を選べる状態。
採用側目線だと、「売り手市場」では採用に苦戦し、採用できない可能性もあると言うことになります。
ただし、「買い手市場」だからと言って必ず採用できるということではありません。売り手市場より採用活動がスムーズに進む可能性が高くなるということです。
このように出ているため、このコラム公開時点では「売り手市場」ということになります。
補足①:新規求人倍率とは
新規求人倍率は、当月に申し込まれた求人数と、求職者数で計算された指標で、有効求人倍率と同様採用市場を見るための統計です。
つまり、2022年7月を当月とする場合、2022年7月に新しくハローワークに出された求人数を2022年7月にハローワークに求職の申し込みをした人で割ったもの、ということになります。
2022年7月の新規求人倍率は下記のとおりです。
令和4年7月の新規求人倍率は2.40倍で、前月に比べて0.16ポイント上昇。
前月と比べてポイントが上昇しているということは、「売り手市場」が続いているというように読み取れます。
補足②:2023年卒の新卒求人倍率について
リクルートワークス研究所の調査では下記のようになっています。
5000人以上の大企業0.37倍で買い手市場
300人未満の中小企業では5.31倍で超売り手市場
この調査結果から、従業員5000人規模の会社に応募が集まっているため、300人未満の中小企業では新卒採用に苦戦するということが分かります。
全ての中小企業が苦戦するということではありませんが、「その傾向が強い」ということなのです。
まとめ
このように、有効求人倍率から採用市場を見ることで、就職・転職に優位(仕事を選べる)かどうか、もしくは採用企業側に優位(求職者が選べる、応募が増える)かどうかが分かります。
採用側の目線だと、「買い手市場」の場合は、仕事<求職者の状態なので、仕事が少ないため応募者が増えることが見込まれますが、「売り手市場」であれば仕事>求職者なので、仕事が多く応募者が分散またはより良い条件の企業への就職を希望することが予想されるため、必要なスキルを持つ人が採用できなかったり、採用予定数に達しなかったり、場合によっては応募がないなんてことにもなってしまいます。
そのため採用企業側は、有効求人倍率から見る採用市況を参考に、採用戦略を立てていくことも必要になってくるのです。
採用担当者になったら、採用市況に留意して採用成功を目指していきましょう。