マナーOJTインストラクターの國吉浩太朗です。
この言葉遣い@ビジネスは、実際に届いたメールや、見たことのある使い間違いをもとに執筆しています。
今回のキーワードは「ご足労」です。
気遣いの言葉である敬語表現も、使い方を間違えると意味がありません。
では、早速みていきましょう。
ご足労の意味
ご‐そくろう〔‐ソクラウ〕【御足労】
相手を敬って、その人がわざわざ出向くことをいう語。「ご足労をかける」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「ご足労」のポイントは「わざわざ出向く」という部分です。ですので会社や自宅、お店など、自分のところに来てもらうとき、または来てもらったときに使用します。
「ご足労」の使い方
「ご足労」は相手がわざわざ自分の所まで来てくれたことを表す言葉です。そのため、相手に自分のところまで来てほしいと伝える場合、ただ「ご足労いただけますか?」と言ってしまうと少し冷たい印象になってしまいます。
このような場合は、「ビジネスメールのポイント 2:クッション言葉を使用する」でご説明したように、クッション言葉を使用して、柔らかい印象になるようにしましょう。
使用例その1 相手に出向いてほしいことを伝える
自分の会社に来てほしいとき
恐れ入りますが、弊社までご足労いただけますでしょうか。
会場へ移動してほしいとき
ご足労をおかけし申し訳ございませんが、会場へご移動をお願いいたします。
使用例その2 相手が出向いてくれたことにお礼を伝える
自分の会社に来てくれた時
先日は、弊社までご足労いただきありがとうございました。
会場に移動してくれたとき
会場までご足労いただきありがとうございました。
使用例その3 クッション言葉と合わせて使用する
自分の会社に来てほしいとき
ご足労をおかけし大変恐縮ですが、弊社までお越しいただけますでしょうか。
自分の会社に来てくれたとき
先日は、お忙しいところ弊社までご足労いただき誠にありがとうございました。
「ご足労」を使うときのポイント
ポイントその1 直接足を運んでもらったときだけ使用する
「ご足労」はわざわざ来てもらった、つまり「足を運んでもらった」ことについて、相手を気遣う言葉です。
そのため、メールを頂いただけの時には使用しません。
間違い例
この文章は「メールの書き方:Step1 メールを作る「3つ」の手順」で真白君が作成したものです。
このような文章だと、まるで「問い合わせ」という場所や住所が存在して、その場所にわざわざ来てくれた、ということになります。
正解例
今回は、メールで問い合わせを受けただけとのことですので、「ご足労」は使うべきではありません。
ポイントその2 ご足労にこだわりすぎない
「ご足労」には、労力をかけさせてしまいますが、という意味も含まれますので、「お手数ですが」や「お手間をおかけしますが」、「ご面倒ではございますが」などと入れ替えることもできます。
ですので、慣れないうちは無理して「ご足労」を使用しなくても良いのです。
使う必要がない敬語を使うことも、相手にとって内容がわかりにくくなる原因になるので注意しましょう。
「ご足労」と入れ替えて使う言葉の例
ご来社
先日はご来社いただきありがとうございました。
「ご足労」を「ご来社」としただけのシンプルな表現です。応用として官公庁であればご来省(庁)ですし、園なら「ご来園」です。少し変えるだけで様々に使うことができます。
お時間を頂きまして
先日は、貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。
「ご足労」も「ご来社」も使用しない表現です。ビジネスは時間も大切です。ですので、打ち合わせなどで相手の時間を頂いたときは、このような表現でも構わないのです。
なお、この「お時間頂きまして」は電話やWEBミーティングの際にも使用できます。比較的使いやすい表現ですので、覚えておくと良いでしょう。
まとめ
敬語は相手に対する気遣いの言葉です。しかし、良かれと思って使った言葉でも、意味を間違えて使ってしまうと、問題が起こったり、かえってわかりにくくなる原因になります。たとえ、こちらの伝えたいことを相手が察してくれるとしても、「説明が下手な人」や「言葉がちゃんとつかえない人」という印象を与えてしまいます。相手からの信頼を得るためにも、正しい日本語を使うように心がけましょう。